自然に見守られて、生きるということ/親島の鼓動 一路真実
本日のドーパミン情報は、一路真実氏の「親島の鼓動」。
本日は、同人誌をご紹介します。
写真があるといいかなと思い、うちの姫にも、登場してもらいます。
一路真実さんは、福岡を中心に活動している文化系サークル「星屑書房」を主宰されている方で、こちらのサークルが、定期的にやっている小説ゼミを見つけて、ブログ主が参加させて頂いたという経緯があります。
小説ゼミは、感情的なジャッジがなく、ニュートラルな視点で、小説を学べるので、小説が上手に書けるようになりたい方には、わりとお勧めできます。
少し前に、個人誌の「親島の鼓動」を出されたということで、レビュー的なものを拙ブログ主が、書いてみたいと思います。
6篇の小さなお話が入っている本で、どれも、不器用な人たちが、不器用なりに生きている物語。
大きなゴールがあるわけじゃないけど、それぞれの「生きにくさ」と、うまく折り合いをつけながら、前を向いていたい人たちの姿勢が、読んでいる人に、さりげなくエールを送っているような、そんなお話たちだなぁと思います。
代表作の「親島の鼓動」は、福岡にある沖ノ島をベースにしたお話で、登場する姉妹に、非常にぐっときました。
真面目すぎるところがあり、それゆえ、精神科にも入ってしまった経緯のあるお姉さんと、一人で全て抱え込んで、無理やり「大人」でいようとする妹は、表面的には違っても、やはり姉妹。
ブログ主は、この姉妹の性格と似ているところがあり、定型的に、弱音を吐くのが苦手なタイプ。
それゆえ、一人で頑張りすぎて、一人で限界を迎えて、そして人知れず復活をするという、そんなことを繰り返している。(最近は反省して、少し改善しつつあります)
なので姉の泰子が、妹の依子に向かって「辛いときは、無理せんでいいんよ」と言った時は、まるで自分に言われたような気がして、思わず涙腺が崩壊してしまった。
小説というものは、どんなものでも、どこか私小説な部分があると思う。作者が体験した感情や思いが、読み手に届く時というのは、「一つの世界」を共有している瞬間でもある。
だから、小説家は、いろんな体験やいろんな感情を体験している方が、佳い小説が書けるのだと、なんとなく思っているのだが、一路さんは、自分で体験した喪失なども、丁寧に味わっているのだろうなと、なんとなく想像した。
そして、人間というのは、つらい時に、心の拠り所があると、なんとか乗り切れるものだ。
姉妹にとって、その拠り所が「親島」なのだろう。
このアニミズム的なところが、ただの人間ドラマで終わらせるのではなく、心のもう少し深い部分に届くような仕掛けになっている。
自然に守られて生きるという感覚は、元々日本人の多くが持っているものだと思う。この感覚を忘れてしまった人も多いけれど、もし、この本来の感覚を取り戻したら、日本はもっと、穏やかな心を持つ人が増えるのではないかな、なんて、ふと思った。
この世の矛盾を受け入れて生きるか?/虐殺器官 伊藤計劃
伊藤計劃は、伝説の文士、と言っても過言ではないだろう。
2009年にガンで亡くなり、作品数も、決して多いとは言えないが、非常に濃密な物語を紡ぐ人だ。読み終わった後に、こんなに心を引っ張られるのも、久しぶりである。
少々、ネタバレも含むので、未読の方は、ご注意を。
ブログ主は、普段、優しい人の方が、いざという時、とても怖いんだと思っている。人当たりの良い人ほど、ぷつんと糸か切れた時に、予想外のことをする。一生、その糸が切れなければ、それはわからないかもしれないけれど。
虐殺器官の主人公は、心優しき青年で、人を殺すことに対しての意図が、自分から生まれているのか、そうでないのか、なんてことも考えてしまう。
対照的に、仲間のウィリアムズは、人を殺すことに、主人公のクラヴィスほど考えたりはしない。
終盤、クラヴィスと戦う時に、ウィリアムズは、
「……(略)……俺は俺の世界を守る。そうとも、ハラペーニョ・ピザを注文して認証して受け取る世界を守るとも。油っぽいビッグマックを食いきれなくて、ゴミ箱に捨てる世界を守るとも」
と言う。
このセリフは、世界の人たちの多くの本音かな、と思う。
世界にある矛盾を、受け入れた方が生きやすいとは思うけれど、自分の中で気が付いてしまった矛盾を無視できない人もいる。
進化の中で、生じてしまった歪みを無視するかしないか。そんな示唆も、この作品には多く含まれているように感じた。
個人的に、この本を読みながら、伊藤計劃は、本当に書くことが好きで好きで、たまらない人なんだろうな、と思った。
もし、彼が、生きていたら、この世界を見て、どんな世界を紡ぐかな、と考える。
ああ。早く「ハーモニー」を買わないと…。読んでまた、精神的にのたうち回りたい。
自分は、トラウマ持ちかも?と思う方にお勧めな本
久しぶりに、ブログを書こうと思う…というか、元々このブログは、レビュー系のブログなので、やっとノロノロと進行しようかなと思い。
「トラウマ」と聞くと、何か仰々しく感じる方も、いらっしゃるかもしれない。
が、トラウマにも色々とあり、日常的に受け続けたトラウマもあり、それを、複雑性トラウマとか、長期反復性トラウマとか、言うらしい。
わかりやすいのは、毒親に育てられて、精神的・肉体的虐待を受け続けたというケースだけど、親からそのような虐待を受けていなくても、トラウマが生まれることがある。
たとえば、貧しい家庭で育った場合、子供もお金に対する執着心が沸いたり、お金に困るような行動をすることが、よくある。
上記は、ブログ主自身のことでもあり、わたしには、お金がないと幸せになれない、という思い込みがある。
その思い込みは、今もあり、以前は、過去癒しにこだわっていたが、最近になって、今とこれからについて、意識を向けられるようになった。
長年、自分を見つめてきた結果、お金そのものに問題があるのではなく、心を開いて人と話すのが、苦手、という性質が、そのままお金の問題になっていたようだ。
なので、人に心を開く練習をしていくと、お金の問題も少なくなっていく、ということに気が付いたので、なるべくこだわらないようにしたいな、と自分を戒めているところでもある。
過去のことにこだわる必要はないと、個人的には思うが、自分の傷の仕組みを知っておくと、「あ、これは私自身の考えではなく、刷り込まれたものかも」と疑えるようになる。
そういった意味では、心の仕組みや、どうしてトラウマが生まれるかなど、知っておくのは悪いことではないと思う。
誰にでも、大なり小なり、トラウマはあるものだ。それを受け入れて、生きることができる人もいるし、それが厳しいという人もいる。
赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本
- 作者: 白川美也子
- 出版社/メーカー: アスクヒューマンケア
- 発売日: 2016/05/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
こちらの本は、そのような心の世界のことを、いまいち知らない方にも、わかるように書かれてある。
キャラクターが登場するので、共感もしやすい。ちなみに横書き。可愛らしい見た目だけど、意外としっかりとした本。
なお、がっつりトラウマを持っている方は、専門家に相談することを、お勧めする。
椎名林檎と、共に大人になっていく
椎名林檎の「歌舞伎町の女王」を買った当時、なんだか、とんでもなく変なものを聞いてしまったような感覚があった。 気が付けば、それから数年、椎名林檎のインタビュー記事が載っている本を買ってみたり、CDが出るたびに、買ってみたり、彼女に陶酔している時期が、確かにあった。
きわきわの感情や、絶望感の中にある変な気持ち良さ。あの「音楽」の中に、自分がきちんと感じきれなかった感情があったから、聞いていて気持ちが良かったのだと思う。
心が未熟な時期は、誰でも経験する。
最近では、昔より少々大人になり、感情に振り回されることも少なくなってきた。感情的になっている女の子を見て「まあ、そういう時期もあるよね」と生暖かい目で見るくらいのことは、できるようになった。
何かで、椎名林檎は、もう自分では歌いたくなくて、プロデュースに専念したい、みたいな記事を読んだ。それを読んだ時、なんとなく納得をした。大人になって、自分についての欲が少なくなったとき、人は、人のために動きたくなる。
椎名林檎と、共に大人になっていく感覚に、少しにんまりとしながら、彼女が過去に感じてきたものを、また聞き返してみたりする。
もう、必死に追いかけることもなくなったけれど、彼女の作った音楽を、好きだと感じたあの心の揺らぎ。あの感じが、今もわたしにとっての、大切な宝物だ。
ブログを立ち上げてみる
ブログを立ち上げてみる、というテスト記事。